近年家畜ふん尿の環境汚染が顕在化し、「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」を中心とした環境3法が施行されたこともあって、エネルギー利用も可能な家畜ふん尿の嫌気性処理法(メタン発酵法)が、ふん尿処理方法の一選択肢として注目を浴びている。この嫌気性処理法によって発生する、メタンと炭酸ガスの混合気体がバイオガスと呼ばれる。
 我が国では家畜ふん尿は好気性処理するのが一般的で、嫌気性処理はあまり行われてきていない。嫌気性処理法は新しい技術ではないが、家畜ふん尿など農林水産業からの副産物、廃棄物を原料とする嫌気性処理法に関しては、技術面、政策面でEU諸国と比べかなり遅れている。
 しかしながら、一方では畜産農家のメタン発酵施設(バイオガスプラント)建設の要望も強くなっている。我が国では家畜ふん尿を原料としたバイオガスプラントは、日本スワイン農場など企業養豚場を除くと、富良野市八紘牧場、京都府八木町、別海町研修牧場、酪農学園大学、町村農場、鳥取県名和町等のプラントが稼働中で、さらに現在、別海町、湧別町、岩手県藤沢町のプラントが建設計画中である。
 このような状況のもとに、我々発起人はバイオガスシステムに関する技術的、経済的、環境的問題を研究するために、3年前に北海道バイオガス研究会を設立し、昨年からは北海道共同研究(事業化特別研究)「バイオガスプラントによる家畜糞尿処理・利用システムの実用化研究」を実施している。
 この度バイオガスに関するシンポジウムを開催するに当たり、現北海道バイオガス研究会を発展的に解消し、新たに一般会員を募って北海道バイオガス研究会を設立し、幅広く農林水産業、食品業などにおいて副産物または廃棄物として生ずる有機物を処理することによるバイオガスの生産、利用などに関する研究を促進し、さらにこれらの健全な普及を図ることが必要という合意に達し、ここに新北海道バイオガス研究会の設立を呼びかけるものである。

平成12年7月12日

北海道バイオガス研究会設立発起人

代表 松田 従三(北海道大学)
    大友 詔雄(北海道大学)
    梅津 一孝(帯広畜産大学)
    西崎 邦夫(帯広畜産大学)
    岡本 全弘(酪農学園大学)
    干場 信司(酪農学園大学)
    岡本 英竜(酪農学園大学)
    石渡 輝夫(北海道開発局開発土木研究所)
    前田 善夫(北海道立畜産試験場)
    小関 忠雄(北海道立根釧農業試験場)
高橋 圭二(北海道立根釧農業試験場)
木村 義彰(北海道立根釧農業試験場)
原  令幸(北海道立中央農業試験場)
浅野 孝幸(北海道立工業試験場)
北口 敏弘(北海道立工業試験場)
丸山 健次(北海道農業開発公社)
常俊  優(北海道経済連合会)
船越  元((社)日本技術士会北海道支部)
竹内  修(日本中小企業技術振興協会)
高井 久光(デンマーク農業科学研究所)